信用格付とは?どのように行われるのか仕組みを解説!

信用格付とは?

ほとんどの事業者にとって、金融機関からの借入はなくてはならないものです。一方で、銀行などの金融機関は事業者を評価することで、融資可能かどうか、金利をどの程度に設定するのかを決定しています。

この評価のことを「信用格付」といいます。

 

信用格付によって事業者・企業に対する融資姿勢が決定されます。信用格付の結果が悪いと、金利を上げられたり、融資を受けることができなります。つまりよい信用格付を得ることができなければ、資金調達にも苦労するわけです。

 

逆に信用格付の結果が高いと、次のようなメリットを受けることができます。

  • 希望通りの金額、返済期間などで融資を受けることができる
  • より低い金利で借入することができる
  • より迅速に融資を受けることができる

 

信用格付はどのように行われているのか、自社の信用格付はどの基準にあるのかを知っておくことは、上手に資金調達を行ううえで、非常に大きなポイントとなります。

 

信用格付はどのように行われるのか?

信用格付は金融機関で規定されている「信用格付マニュアル」に従って行われています。マニュアルに従って、以下の3つのステップを踏むことで信用格付が決定されます。

 

第一次評価「定量評価」

決算書数値に基づく評価で、最近では「決算書分析システム」などで自動判定されています。自動判定による財務スコアリング、つまり「点数化」により結果が出てくる仕組みになっています。この自動評価が信用格付の70〜90%を決定しているといわれています。

 

つまり決算書の内容が信用格付の結果をほとんど左右するといっても過言ではありません。評価基準となる財務スコアリングは、金融機関により多少は異なりますが、大筋は同じと考えられます。主に評価される財務指標は以下の4つに分類されています。

 

1.安定性

自己資本比率(%) 自己資本÷総資本 企業の本来の体力を示します
流動比率(%) 流動資産÷流動負債 流動負債を流動資産がどの程度カバーできるか、つまり即資金化できるかを示しています
ギアリング比率(%) (短期・長期借入金+社債)÷自己資本 資金調達のうち借入金の自己資本に対する割合を示しています
固定長期適合率(%) 固定資産÷(固定負債÷自己資本) 固定資産をどの程度長期資金で補えるかを示しています

 

2.収益性
売上高経常利益率(%) 経常利益÷当期売上高 売上に対してどれだけの経常利益を上げているのかを示しています
総資本経常利益率(%) 経常利益÷総資本 資本投入によりどれだけの利益を生み出しているのか、資本の運用効率を示しています
収益フロー(利益額) 主に黒字が何期続いているのかを示しています

 

3.成長性
経常利益増加率(%) (当期経常利益ー前期経常利益)÷前期経常利益 当期末と前期末の経常利益を比較して業績規模がどれだけ拡大しているのかを示しています
自己資本額 自己資本額が大きいほど財務的に安全と判断されます
売上高 企業の成長力を示しています

 

4.返済能力
債務償還年数(年) (有利子負債ー運転資金ー現預金)÷(経常利益+償却費ー税金) 借入金を利益などによるキャッシュフローから何年で返済できるかを示しています
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) (営業利益+受取利息・配当金)÷支払利息・割引料 企業の利息の支払能力を示しています
キャッシュフロー額 営業利益+当期減価償却実施額 企業の返済原資能力を示しています

 

定量評価では、これら4つの項目でバランスよく高点数を稼ぐ必要があります。単純に「黒字であればOK」というわけではないのです。またこれらの財務スコアリングの細かなロジックは、通常は金融機関担当者には知らされていません。企業側に伝わることで、裏をかかれることを防止するためです。

 

第二次評価「定性評価」

決算書上に数値化できない要素を拾い上げます。以下の項目については、決算書上で数値化できない項目ですので、金融機関側の主観などに基づいて判定されます。

  • 経営者の能力
  • 市場の将来性・成長性
  • 過去の返済履歴
  • 経営計画策定能力・財務管理能力
  • 販売力
  • 技術力
  • マスコミの記事内容
  • 業歴
  • 他社との競合状態
  • 株主内容
  • 従業員のモラル

ただし第二次評価で信用格付結果が大幅に変更されることはまずありません。

 

第三次評価「実態評価」

決算書の裏側に隠れた実態、返済潜在能力を評価します。第一次評価や第二次評価の評価対象に該当しない事項を考慮し、融資先の潜在返済能力を左右する事項を評価します。具体的には以下のような内容です。

  • 不渡り手形、回収不能売掛金、換金不能な不良在庫、貸付金の回収不能分→資産から控除されます
  • 土地や有価証券の含み損→資産から控除されます
  • 土地に含み益→資産にプラスされます
  • オーナー、支援者、関連企業の資産余力→資産にプラスされます

第三次評価ではマイナスの要素は厳しく判定される一方、プラスの要素はそれほど信用格付の結果に影響を与えることはありません。

 

信用格付と債務者区分

信用格付の結果に基づき、貸出先は以下の5つの債務者区分へ分類されます。どの区分に分類されるかで、融資を受けることができるかどうかが決定されます。

 

正常先より下に分類されてしまうと、新規融資を受けることはかなり難しくなります。

 

正常先

業況が良好であり、かつ財務内容にも特段問題ないと認められる債務者です。決算書上では「当期利益が黒字」「純資産の部にマイナス表示(累積損失)がない」という条件を満たしている必要があります。

 

ただし赤字であっても、以下のような内容であれば正常先とみなされる場合もあります。

 

創業赤字

企業創業時は開業資金などで費用が特別に計上される場合も多くあり、その結果赤字を計上してしまいます。このケースでは、当初事業計画と大きな乖離がない場合は正常先と判断されることもあります。

具体的には「当初計画の売上高なども目標が7割程度達成している」「計画により5年程度で黒字化する」などの状況です。

ただし多くの金融機関では「営業利益が黒字」を条件としています。つまり創業期でも営業活動で十分に収益を計上していることが求められます。

 

一過性の赤字

固定資産の売却損、減損損失の計上、有価証券評価損の計上などにより、赤字が一過性であると認められた場合、正常先と判断させることもあります。この場合でも、決算書上の採取段階の赤字であることが条件で、営業損益・経常損益の段階では黒字であることが前提です。

 

正常先は、前述の4つの指標(安全性・収益性・成長性・返済能力)によりさらにいくつかの信用格付に区分されます。多くの金融機関では6段階ほどに区分しており、上位に分類されるほど、より有利な条件で融資を受けることができます。

 

要注意先

業況不振で財務内容に問題がある債務者、延滞が発生しているなど返済状況に問題がある債務者です。決算書上では、以下のうち1項目でも満たしてしまうと、要注意先に該当する恐れがあります。

  • 当期利益が赤字
  • 融資返済が1ヶ月以上延滞
  • 純資本の部にマイナス表示(累積損失)がある
  • 債務超過

 

要管理先

要注意先の中で以下の要件に該当する場合、別途「要管理先」として区分されます。

  • 融資返済が3ヶ月以上延滞
  • 貸出条件の緩和

 

破綻懸念先

現状、経営破綻の状況にはないが、経営難の状況にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者、実質的に債務超過の債務者です。決算書上は以下のうち1項目でも満たしてしまうと、破綻懸念先に該当する恐れがあります。

  • 2期連続債務超過、かつ融資返済が3ヶ月以上延滞
  • 融資返済が6か月以上延滞

 

破綻懸念先に分類されると、新規融資を受けることはできません。それどころか、既存融資の回収や既存融資金利の上昇なども求められます。

 

実質破綻先

法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状況にあり、再建の見通しがない状況にあると認められるなど実質的に経営破綻に陥っている債務者です。

 

破綻先

法的・形式的な経営破綻の事実が生じている債務者です。倒産・清算・会社整理・会社更生・和議・手形交換所の取引停止処分等の事由により経営破綻に陥っている債務者です。

 

債務者区分と債務償還年数

債務者区分の決定において、近年重要視されるようになっているのが「債務償還年数」です。信用格付の「第一次評価・返済能力」でも説明した項目ですが、企業のキャッシュフローによる借入金の返済能力を示す数字です。

 

金融機関側からすれば貸付した融資金をきちんと返済できれば問題はありません。極端な話、収益力が低くても債務償還能力が高ければ問題はないのです。逆に収益力が高い先であっても債務償還能力が低い先に対しては、返済に対するリスクも高く、債務者区分を下方修正する必要があります。

 

債務償還年数の計算は、以下の計算式で行われます。

  • 債務償還年数(年)=(有利子負債-運転資金-現預金)÷(経常利益+償却費-税金)

 

ここで問題とされるのが「償却費」の取り扱いです。

金融機関担当者は決算書上に計上された償却費が適切かどうか、償却不足がないかを確認します。

 

また不動産賃貸業や遊戯業などでは、償却費は今後の事業継続のための必要経費としてみなされ、返済原資(キャッシュフロー)に加算できないと判断されるケースも多くなっています。

 

例えば償却資産が古くなった場合には、当然資産を新たに購入しなければならず、償却費がその「積立費用」としてみなされるのです。例えばパチンコ経営では資産に計上しているパチンコ台は、常に最新のパチンコ台を備え付けなくてはいけません。そのためパチンコ台の償却費は、新台の購入費用のための「積立」とみなされるケースも多くなっています。

 

債務者区分と債務償還年数の関係は、概ね以下のようになっています。

正常先 債務償還年数10年未満
要注意先 債務償還年数10年以上20年以下
破綻懸念先以下

債務償還年数20年以上

借入期間が長期化する業種(ホテル業・不動産賃貸業など)では、上記の表に関わらず「30年以上」が正常先と要注意先の見極めラインとしている金融機関が多いようです。

 

債務者区分と貸倒引当率・融資スタンスの決定

決定された信用格付や債務者区分に基づき、金融機関は貸倒引当率と融資スタンスを決定します。金融機関は融資先に対して返済不能に対するリスクを計算し、一定の貸倒引当金を計上しなければいけません。
その貸倒引当金を融資金額に対してどれだけの割合で計上するのかを示すのが貸倒引当率です。

 

融資スタンスについては、基本的に正常先より低い融資先には消極的、もしくは回収方針となります。

 

ただし金融機関が承諾した事業改善計画書を出せば融資可能とされるケースもあります。とはいっても、事業改善計画の目標達成については随時金融機関による厳しいモニタリングが行われます。

 

貸倒引当率や融資スタンスの決定方法は金融機関により若干の差がありますが、概ね以下のようになっています。

債務者区分

信用格付

貸倒引当率

融資スタンス

正常先

正常先(1格・2格)
正常先(3格・4格)
正常先(5格・6格)

0〜3%

積極推進方針
推進方針
現状維持方針

要注意先

 

要注意先

要注意先(7格) 5〜8% 現状維持方針(保証協会保証付きであれば融資可能)

要管理先

要管理先(8格) 30% 回収方針(※)

破綻懸念先

破綻懸念先(9格) 50〜70% 対象外(※)

実質破綻先

実質破綻先(10格) 100% 対象外(※)

破綻先

破綻先(11格) 100% 対象外

※但し金融機関が承諾した事業改善計画書を出せば「追加融資」「新規融資」が可能。

 

銀行では融資金に対して、返済不能に対するリスクのために、一定の貸倒引当金を計上しなければいけません。その引当率を決定するのが、信用格付なのです。債務者区分による貸倒引当率は、主に次のようなものになっています。

 

信用格付を改善するには

事業資金を金融機関によろ調達する場合、金融機関が決定した信用格付が大きなポイントとなります。正常先と区分されない場合、新規借入が困難となるかもしれません。また同じ正常先でも上位の信用格付を得ることで、低金利など好条件で融資を受けることができます。

 

自社の信用格付を改善するためには、自社の問題点を正確に把握する必要があります。信用格付を決定する要素は「決算書指標」が大部分を占めることを考慮し、以下のようなポイントを押さえてみましょう。

 

収益性の改善
固定費の削減
  • 費用対効果の低い科目の見直し
  • 相見積もりや他仕入先との比較・検討
  • 具体的な広告宣伝費の支出効果の検証

 

限界利益率の改善
  • 販売単価の見極め
  • 請求漏れの確認
  • 在庫ロスがないか
  • 仕入単価などの取引条件の交渉実施

 

財務体質の改善
資産と負債のバランス
  • 受取手形・売掛金の回収時期の見極め
  • 短期借入金を長期借入金へシフトさせる
  • 役員借入を利用し、金融機関借入を圧縮する

 

自己資本比率の改善
  • 役員借入金を資本金へ振替る
  • 増資の検討
  • 繰越損失のある場合、役員借入金の債務免除を検討する

 

経費処理の改善
  • 営業利益に該当する収入が営業外収益や特別利益に計上されていないか?
  • 臨時的・偶発的な費用が経常的なものとして組み入れられていないか?
  • 30万円未満の償却資産を、資産計上し全額償却する処理をしていないか?
  • 倒産防止共済の掛け金は、資産計上しているか?

 

自社の信用格付を知らないという経営者も多いかもしれません。かつての金融機関は、トラブルにつながることから信用格付や債務者区分を取引先に公表することを避けていました。しかし最近では取引先に対する総合的なコンサルティング業務の一環として、信用格付や債務者区分を取引先に公表する金融機関も多くなっています。

 

金融庁からも希望する取引先に対しては公表するように指導を受けています。信用格付を知ることで自社の問題点を改善することにもつながります。その結果、金融機関による資金調達も好条件で行うことも可能になります。

 

「現状を認識し、自社の経営の問題点を把握するためにも、信用格付の結果を教えてもらえませんか?」

 

金融機関側にこのように交渉してみると、担当者も嫌な顔はしないのではないでしょうか。